「禁じ手」に踏み込んだポプラ 食品ロスを減らす策とは

世界には飢えや栄養失調で苦しんでいる人が8億人以上いると言われています。
一方、日本では年間646万トン以上の食品が、まだ食べられるのに捨てられていると環境省が発表しています。(平成27年度)この、まだ食べられるのに廃棄されてしまう「食品ロス」が社会問題となっています。
中堅コンビニのポプラは、株式会社エイチ・アイ・エスのグループ会社が開発したクーポンアプリ「No Food Loss」(ノー・フード・ロス)を使い、消費期限や賞味期限の迫った食品や季節はずれになった飲み物などを5割引きで販売しています。アプリをダウンロードするとGPS機能で近くの店舗で扱っている割引商品がスマートフォンに表示されます。利用者は購入したい商品が見つかれば、画面をスマートフォンに表示させ、店のレジにあるQRコードをスキャンすることで、店員が店舗の棚から下げていた商品を半額で販売するというシステムです。
「No Food Loss」(ノー・フード・ロス)を利用して販売した売上の一部は特定非営利活動法人TABLE FOR TWO Internationalを通して、アジアやアフリカの子供たちの給食費として寄付される仕組みになっています。
ポプラでの5割引きは今年の2月から首都圏などの32店舗で実施されており、8月末までに100店まで広げる計画で、直営店だけでなくフランチャイズ店でも取り組んでいくとのことです。

参考:https://www.asahi.com/articles/ASM7Z4F97M7ZULFA00S.html?iref=pc_ss_date

─ YODOQの見方───────────────────────────

コンビニの食品ロスの背景には本社が品揃えを重視する一方、廃棄に伴う不利益は店側が負担する仕組みとなっていることで、本社が商品価値を下げないように値引販売を禁止し、店側も本社には逆らえず廃棄していることがあげられます。また、コンビニには24時間営業の店舗が多く、スーパーや他の小売店のように閉店間際というタイミングがなかったことも値引しなかった一因とも考えられます。
コンビニの食品廃棄量は1店舗1日あたり、約15.7kgも発生しており、食品ロスが社会問題化しているため、他の大手コンビニでもさまざまな取り組みが行われています。

大手コンビニの食品ロス対策
■ローソン
「Another Choice(アナザーチョイス)」という食品ロス削減プログラムの実証実験を沖縄と愛媛で6月11日~8月31日まで実施し、その結果を踏まえて全国に拡大する計画です。「Another Choice」とは消費期限の近い対象商品の売上総額の5%が次世代を担う子供たちへの支援に寄付されるとともに、購入した人にも対象商品の購入額に対して100円につき5ポイントが還元されます。
他にも、今まで賞味期限は残っているものの店舗への納品期限が過ぎたお菓子や即席麺などの余剰食品は物流センターにおいて廃棄されていましたが、8月5日までに全国のフードバンクに寄贈したそうです。

参考:https://www.ryutsuu.biz/promotion/l072540.html

■ファミリーマート
食品ロス削減の一環として、7月27日の土用の丑の日に販売するウナギ弁当を完全予約制にしました。店頭販売を取りやめた分、昨年と比較すると販売額は2割減少しましたが、廃棄費用が大幅に減ったため利益としては平均で7割増加しました。
また、おでんの製法を見直し、全商品の販売時間を1時間延長することで廃棄率も減少させることを発表しています。昨年秋には東京都内で注文が入ってからレンジ調理するレンジアップタイプのおでんを実験導入しており、売上好調をうけて全国展開が決定されています。このレンジアップタイプは従来型のおでんに比べ廃棄ロスが10%程度少なくなる見込みだそうです。

参考:https://www.ryutsuu.biz/strategy/l080929.html

■セブン-イレブン
今秋からセブンの電子マネー「nanaco」で消費期限が近づいたおにぎりなどを購入してくれた人には最大10%のポイント還元をする方向で検討されています。

今年ポプラで導入したアプリ「No Food Loss」は、消費者にとってはお得に買い物ができるという実利と社会貢献をしているという意識を持ってもらうことができ、値引商品を買うのは恥ずかしいというマイナス感情を社会貢献に寄与しているというプラスの感情に変換しています。
企業側にとっても今までは廃棄していた食品を半額とはいえ販売できることで売上の増加と廃棄費用の削減という実利と食品ロス削減に取り組み社会貢献している企業というブランドイメージの向上にもつながります。
このように消費者と企業が共に実利と好感情を得られるビジネスモデルには見習うべき点が多いと思います。

update : 2019/08/21 | スマートフォン, ネットサービス