USJマーケターのヒット生む思考法

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが現在提供しているシーズナル・イベント「ユニバーサル・クールジャパン」の「名探偵コナン・ザ・エスケープ」を成功に導いた陰にはマーケターの存在があり、マーケターが果たした役割は大きい。

マーケターになるためはT (Thinking<考える力>)、L (Leadership<リーダーシップ>)、P (Passion<情熱>)が大切。特に考える力が大切。
ポイントは、Objective (目的)、Who (誰をターゲットにして)、What (何を)、How(どのようにして提供するのか)の4つです。

「ユニバーサル・クールジャパン」は、世界に誇る日本のコンテンツを複数結集させ、世界最高のクオリティーでアトラクション化することをコンセプトにしています。
誰をターゲット(Who)にすることが来場者を最大化できるかです。これを考える上で重視したのが、(1)ターゲット層のボリュームが大きいこと、(2)コンテンツに対するファンの好感度の度合いが強いこと、(3)満たされていないインサイト(消費者も気が付いていない心の奥底にある課題)が存在すること、(4)ファンのインサイトが解決可能なことの4つです。

私たちが発掘したファンのインサイトは、「本当は、自分もコナンみたいな名探偵になれるくらいの能力があると信じたい!」というものでした。

次に、「本当は、自分もコナンみたいな名探偵になれるくらいの能力があると信じたい!」というインサイトを満たすためには何を(What)提供したらいいのか。

結論は、提供すべきは「コナンの仲間として一緒に謎を解いたときの達成感」でした。

最後に私たちが考えたのは、「コナンの仲間として一緒に謎を解いたときの達成感」をコナンファンに提供するためには、私たちのノウハウを活用して、どうやって(How)それを実現できるのかでした。

最も大切にすべきは、コナンの世界を完全再現することだと考えました。コナンの仲間として謎を解き達成感を味わうためには、コナンのファンが本当にコナンの世界に身をおける環境をつくることが何より重要と考えました。そのためには、人気キャラクターの完全再現、映画やアニメをライブ空間で再現した大迫力のスタント演出や本格的なライブ・パフォーマンスを融合して世界観を作ろうと考えました。また、達成感をより強いものにするために、コナンの仲間になることに加え、窮地から脱出する演出が必要と考えUSJオリジナルの「リアル脱出ゲーム」の形でアトラクションを提供しようと考えました。

引用:https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO4501183020052019000000?channel=DF071120184461

─ YODOQの見方───────────────────────────

イノベーション研究の世界的第一人者であるクレイトン・クリステンセンの著書に「ジョブ理論」という書籍があり、マーケティング部門でベストセラー書籍となっている。

「ジョブ」とは「顧客が片づけなければいけないこと」と定義しており、ジョブ理論は「ジョブ」「雇用」「解雇」という独特の言葉で、商品を買う理由を考える。

例えば、毎日の食事の後の食器洗いが大嫌いで、ある時、食洗器を購入することにした。そうすると食洗器に食器を入れボタンを押すだけで大嫌いな食器洗いから解放された。これは、食器洗いという「ジョブ」から「解雇」され、食洗器が「雇用」されたということになる。
ジョブ理論ではこのように、顧客の立場に立って「ジョブ」から「解雇」されるために「雇用」したくなるものを問い続けていくことである。

よくマーケティングでは「ニーズ」という言葉を使うことが多いが、「ニーズ」と「ジョブ」は異なる。ニーズは「祝日を楽しみたい」「長生きしたい」「くつろぎたい」のような漠然とした欲求を言うが、これらの解決方法が1つとは限らない。解決のためには、さまざまな選択肢が考えられる。

ジョブは顧客の具体的で切実な状況で生まれる。
例えば、
「彼女とデートを楽しみたい」
「健康的な食生活をおくりたい」
「1日中家でゆったりと過ごしたい」
というような顧客のジョブを解決するものを提示できれば顧客は購入する。

これを見誤った例として、
共働き世帯の多い地域にあったごく普通のスーパーは食品や日用品を一通り揃えており、夕方になるとレジに行列ができ賑わっていた。ところが、より顧客の好みにあわせようと、比較的裕福な世帯が多いところに目をつけて、グルメな食材を数多く揃え、どこでも売っているような日用品を売らなくなった。すると、あんなに並んでいたレジの行列が消え顧客が3割減ってしまった。
この例は顧客の「ジョブ」を見誤った良い例である。顧客は夕方の忙しい時間に必要なものを短時間で購入したいというジョブをもっていた。これまでこのスーパーはこのジョブに対して雇用されていた。しかし改装により、顧客の「ジョブ」を満たせなくなり、雇用されなくなってしまったのである。

ジョブ理論で考えると、ライバルは同じ市場にいるライバルだけではなくなる。映画やドラマをネット配信するネットフリックスCEOは、「ライバルはアマゾンか?」と問われて、こう答えている。
「リラックスするためにすることは、すべてライバルだ。ビデオゲームとも競うし、ワインとも競う。実に手ごわいライバルだね。
「家でリラックスした時間を過ごしたい」という顧客のジョブを解決するために雇用されるサービスを提供することが大切で、同様のサービスを提供する相手だけが競合ではないことを示している。

update : 2019/05/29 | ソフトウェア